電力供給制限の規模は拡大し続けており、足元で停電や電力供給制限を実施している省・自治区は20に達している。中でも、西部の雲南などは、太陽光発電産業における川上の重要拠点であり、東部の江蘇、浙江一帯は電池、モジュール、補助材料の重要拠点だ。電力供給制限の影響を受ける企業には、9月初頭に既にかなり不足していたシリコン材や、シリコンウエハー、EVAなどの大手メーカーも含まれる。
9月中旬から下旬、シリコンウエハー製造分野全体が受けた影響は、電池メーカーよりもわずかながら大きく、不足状況は厳しさを増した。このため、9月中頃には、首位メーカーである隆基緑能科技(ロンジ)がシリコンウエハーの価格を大幅に引き上げたが、供給不足を受けて、買い手は高水準の価格を受け入れている。
9月最終週になると、多結晶シリコンの原材料である金属シリコンの価格が、生産制限と売り惜しみにより高騰し、1キログラム当たり50~60人民元にまで達した。この結果、多結晶シリコンの材料コストが大幅に上昇し、多結晶シリコンメーカーは、膨らんだコストを買い手に転嫁。一部メーカーでは、1キログラム当たり230~260人民元という高額を提示しているという情報が市場に出回るようになった。電力供給制限の影響が大きくなる前の同210人民元前後の水準からすると、川中、川下メーカーの対応が追い付かないほどの急速な値上がりとなっている。
シリコン材が予想を超える高騰となる中、国内外で契約済みのモジュール受注案件は深刻な赤字に陥り、多くのモジュールメーカーが出荷を見合わせ始めた。その結果、最川下となる世界の発電所事業者がモジュールメーカーと価格の再交渉を行ったり、プロジェクトを延期したりといった事態が相次ぎ、苦境に立つこととなった。
電池やモジュールのメーカーは、電力制限の影響にかかわらず、10月1日からの国慶節連休期間、かなりの生産能力を停止し、10月の稼働率を引き下げており、過度に上昇した材料価格と供給不足が調整されると期待される。足元の統計では、電池、モジュールのメーカーの10月の稼働率は50~70%程度に低下している。
また、国慶節連休に入る前日、単結晶シリコンウエハー最大手の天津中環半導体が、また大幅な値上げを発表した。値上げ幅は、太陽電池セル1ワット当たり0.07~0.09人民元のコスト増に相当するものだった。注目すべきは、同社が初めて、182㎜シリコンウエハーの価格を提示したことで、これは、電池、モジュールのメーカーの10月の稼働率が大幅に引き下げられたことをいち早く反映したものだった。供給不足や世界的にプロジェクトが遅延し始めている状況を受けて、PV InfoLinkは、来期の需給データベースで、世界の生産予測を引き下げる見通しだ。
原材料高の解消が難しいことを受けて、太陽光発電モジュールの主要メーカーである隆基緑能科技、晶科能源(ジンコソーラー)、天合光能(トリナソーラー)、晶澳太陽能科技(JAソーラー)、東方日昇新能源(ライセンエネルギー)が、初めて共同声明を出し、次のように要望している。
- 政策により、企業が年末に先を争って設置する状況を回避すること。
- 原材料不足と稼働率低下の影響が出ている中、多くの顧客が、モジュールメーカーへの十分な理解を示し、発電所設置計画の延期を適切に検討すること。
- 中国太陽光発電産業協会などの機関が適時、川上・川下の生産能力を監視するとともに市場情報を交換して、川上と川下の需給バランスを確保し、さらには、必要な指導を行い、原材料価格の無秩序な高騰と過当競争を効果的に抑制すること。
- 産業チェーンの各企業が、持続可能な開発という視野をもって、太陽光発電市場の健全な発展を確保すること。